Ed Sheeranをもっと好きになる6つのエピソード。
BY FEEL ANYWHERE
2022.06.21
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2022.06.21
幅広い音楽表現で世界中を魅了し、まさに今の時代を代表するエド・シーラン。様々な記録を持つことは、彼を紹介する上で欠かせない。2014年にリリースした「Thinking Out Loud」が、母国イギリスで1年間ずっとトップ40に入り続けるという新記録を打ち立てた。またライブ動員数も世界6大陸で開催された『÷(ディバイド)Tour』で815万人を動員、U2の持っていた〈史上最も成功したコンサートツアーをおこなったアーティスト〉の称号をものにした。もちろんグラミー賞も、これまでに主要部門を4度受賞している。どれもエドの活躍を的確に表す言葉だ。そう、エドは誰もが認める2010年代で最も成功した歌手の一人なのだ。
Thinking Out Loud (Official Music Video) ーエド・シーラン-
ただエドを語る上で称号や記録めいた話だけでなく、その魅力的な横顔を是非知っていただきたい。今回の特集ではエドをもっと好きになる理由を紹介していこう。
Photo:Dave J Hogan/Getty Images
エドのステージを観たら、誰もがライブの見方に変化が起きるのではないだろうか。彼はどんなに大きなステージであろうが、ストリートライブのようにたった1人のライブ・パフォーマンスで観客たちを魅了してしまう。ステージでの相棒は、キャリア当初から愛用しているマーチンの小ぶりなギターとループステーション(以下 ルーパー)。演奏の短いフレーズを録音/再生を繰り返しながら重ねていくことで、1人でも多彩なパフォーマンスが可能にするのがルーパーだ。エドはルーパーを駆使しながら、リアルなステージで様々な音域での歌声や、ギターのストローク演奏やカッティング演奏、打楽器のようにギターを叩いて作り出すパーカッション音をステージ上で録音、それらを重ね合わせバンドで演奏しているかのような厚みのある音を作り出していく。そのプロセスを観客と共有しながら(時には参加させながら)、音楽が出来上がっていく様子は魔法のように感じられるだろう。
Give Me Love | LIVE ーエド・シーラン-
確かに魔法かもしれない。なぜならルーパーで作り出す音楽の難しい点は、録音した音同士のボリューム調整や重ね合わすタイミングがとても重要で、一つでも失敗すればステージが崩壊してしまうリスクを持っている。そんな緊張感ある演奏をエドはなんなくやってのけてしまうのだ。2019年に初の東京ドーム(大阪は京セラドーム)公演をおこなってるが、この時も、エドはいつものようにたった1人で東京ドームのステージに立ち、5万人を超える観客に相対し圧巻のライブを繰り広げた。その姿を想像するだけで、ゾクゾクするようなカッコ良さがイメージできるのではないだろうか。
ちなみこの東京ドーム公演、海外男性ソロアーティスト(しかも当時は20代という若さ)で単独ライブを実現したのはエドが初となったのはもちろん、たった1人での公演も前代未聞となった。エドが日本でもどれだけ高い支持だったのかわかるエピソードではないだろうか。
エドは幼い頃から身体的なハンディと向き合ってきた。ひとつは生まれながらにして顔に赤アザがあり、その治療をおこなった後遺症で吃音症になってしまったという。またエドには片耳の鼓膜がなく、簡単に喋る事ができなかった時期もあった。そんなことが理由で、エドは学校でいじめられることが多く、泣いている毎日を過ごしていた。そこで音楽家である彼の父親が、エドを元気づけようとレコードをプレゼントしたことをきっかけにエドは音楽に魅せられていく。
そのレコードはエミネムの「ザ・マーシャル・マザーズLP」。エドはのめり込むように聴き続け、10歳の時にはエミネムの曲をすべて暗記してラップで口ずさめるようになっていた。それは、エドに思わぬ効果を持たらした。エミネムに合わせて繰り返しラップを練習することで、高校時代まで悩まされた吃音を克服できたとエド自身が語っている。
またエドがラッパーとしての才能を持ち合わせているのも、この時の体験が大きい。いまではラップバトルで本職のラッパーたちを打ち負かしてしまうほどのテクニックを披露、様々なヒップホップ・アーティストたちを驚愕させている。またセカンドシングル「You Need Me, I Don’t Need You 」では、アコギとルーパーを駆使し、全編が高速ラップという最高にクールな曲を発表。その真新しい音楽スタイルは音楽ファンを驚愕させた。
You Need Me, I Don’t Need You | LIVE -エド・シーラン-
エドの人生に間違いなく大きな影響を与えたエミネム。物語はさらなる奇跡に繋がっていく。なんとエミネムのアルバム『Revival』(2017)に収録される「River」のフィーチャリングゲストに、エドがオファーを受けたのだ。
エドはアーティストとしてエミネムに向き合うことになったのだが、最初に会った時のことをエドは次のように振り返っている。
“彼はいろんなゲーム機を持っていてね。ゲームが大好きなんだ。
実のところ、初めて会った時は音楽を作らなかったんだ。
4時間ぐらい、マーベルや『アべンジャーズ』について語ったんだ”
そんな微笑ましい出会いから2人は親交を深め続けている。2019年にエドが発表したアルバム『No.6 Collaborations Project 』の「Remember The Name(feat.Eminem,50cent)」で、今度はエミネムがフィーチャリングゲストで参加。
Remember The Name (feat. Eminem & 50 Cent)-エド・シーラン-
そして2020年にはエミネムの『Music To Be Murdered By 』に収録された「Those Kinda Nights」で、再びエドとエミネムのコラボレーションが実現している。エドの人生に深く入り込み、未来に向けて背中を押したエミネム。2人の奇跡的なアーティストシップが今後も続いていくかと思うと非常に楽しみだ。
エドは幼少期から、よく父親にライブに連れていってもらっていた。そこで出会ったのが、エリック・クラプトンやダミアン・ライスといった世界でも指折りのギターリスト。彼らの音楽に感化され、ギターの練習や曲作りに没頭、13歳になると最初のデモアルバム『Spinning Man』を制作するなど早熟な才能を開花させていく。そして本格的な音楽の勉強をするマインドが日に日に強くなり、地元の高校を中退しロンドンへの移住を決意する。ロンドンでの生活は音楽に集中する環境としては最高だったものの、音楽に没頭しすぎるあまり、満足な生活費を稼ぐ余裕がなくなっていた。正確に言えば、アルバイトをして生活費を稼ぐ時間より、音楽と向き合う時間を優先させていったと言えるだろう。やがて経済的に家賃を払えなくなったエドは、ギターとリュックサックを持って、友人やライブハウスに来てくれるファンの家、地下鉄などを転々とするホームレス生活を始める。しかし、それは堕落ではなかった。まるで現代の吟遊詩人であるかのように、アコギ1本で年間300本以上のライブを行うなど精力的な活動をおこなっていった。
Photograph (Official Music Video) -エド・シーラン-
※エドが生まれた頃からアーティストに成長するまでの映像が使用されている。
この時の経験から生まれたのが、デビューシングルにして全英3位・全米16位を記録、エドの名を世界規模で一躍有名にしたのが「The A Team」だ。透明感のあるエドの歌声と美しいアコギのメロディは心を穏やかにしてくれる。しかし、この曲で描かれているのは真逆だ。「A Team」とは重度の薬物中毒者を意味する言葉で、ホームレスシェルターでボランティアをしていた時に出会った女性の生い立ちからインスピレーションを得て生まれている。この曲で歌われる少女は何度もドラッグから抜け出そうとする。しかしそんな少女にとって、社会があまりにも冷たすぎるということが歌われている。日本では想像できないようなドラッグや格差社会の問題が写し出された「 The A Team」は、欧米で大反響を呼んだ。
The A Team (Official Music Video) -エド・シーラン-
自らを厳しい環境の中に置き、そこで多くの人々の人生も見つめてきたであろうエド。彼の歌には、人生の喜びや悲しみを受け止め、愛しむような視点があることに気づく。若干20歳ながら重い社会問題に向き合い、しっかりとしたメッセージを発したエド。同世代の若者たちはますます彼に夢中になっていく。
ジャスティン・ビーバーとエド・シーラン(2015年/ミラノ)。Photo:Dave Hogan/Getty Images
エド・シーランは様々なアーティストと親交を持っていることでも有名だ。これまでにコラボレーションしたアーティストは、前述のエミネムのほかにも、 ビヨンセ、トラヴィス・スコット、ジャスティン・ビーバー、ファレル・ウィリアムス、ブルーノ・マーズ、クリス・ステイプルトン、 BTSなど書ききれない数のアーティストたちが名を連ねている。サウンドスタイル、音楽ジャンルの違うアーティストたちとの楽曲制作は、常に新たな感覚や発見をエドにもたらしている。
Sing (Official Music Video) -エド・シーラン-
※ R&B色が色濃く出ているエドの新境地。プロデュースはファレル・ウィリアムス。
エドのアーティストシップは世界中に及び、日本国内ではONE OK ROCKとの親交が深い。自身のアジアツアーにONE OK ROCKをゲストに招聘しつつ、2019年に横浜アリーナで行われたONE OK ROCKのライブにはサプライズで飛び入り参加し「Shape of You」で共演、大きな話題となった。
“Shape of You” @Yokohama Arena -エド・シーラン×ワンオクロック-
最近では「2Step (feat. Antytila)」で、ウクライナの人気バンド・アンティティラともコラボレーションをおこなっている。そのきっかけとなったのは、2022年3月にイギリスのバーミンガムで開催されたウクライナ支援コンサート「Concert for Ukraine」。従軍が理由で出演できなかったアンティティラに、エドが声をかけたことから実現した。国際社会で起きている出来事にも、エドは真摯に向き合っている。ウクライナの状況に向き合おうとしている。なお、このミュージックビデオの配信による印税収益をウクライナ人道支援活動に寄付することも発表されている。
2step ft Antytila (Official Music Video) -エド・シーラン-
エドの素晴らしさは欧米以外のアーティストとの出会いも大事に育み、その関係性を発展させていく姿勢だ。それは他のアーティストではあまり見られることではないように思う。世界中のアーティストと繋がっていくエド。いつかそんなアーティストたちと一緒に何かを奇跡を起こしてくれのではないかと楽しみでならない。
様々なアーティストと親交を深める中でも、テイラー・スウィフト(以下 テイラー)との関係は特別だ。2人の出会いは2012年。テイラーが偶然に聴いたエドの曲と歌声に魅せられてエドに連絡したのがきっかけだった。すぐに2人は曲づくりを始めて「Everything Has Changed」が完成、テイラーのアルバム『Red』に収録された。そして2013年から始まったテイラーのワールドツアーのオープニングアクトとして出演、それ以降もお互いの作品でコラボラーションを重ねて絶対的な信頼感を持つ関係を続けている。
エド・シーラン × テイラー・スウィフト-
そしてテイラーは、後にエドと結婚することになる幼馴染みのチェリー・シーボン(以下、チェリー)との愛を育むきっかけをも作っていた。
なにもかもが上手くいっていたエドだったが、異変が起きる。2014年にアルバム『x( マルティプライ )』をリリースし、ワールドツアーを行なっていた2014年から2015年にかけて、エドは精神的に不安定な時期を過ごしていた。名声からくる強いプレッシャーに苛まれ、エドはアルコール依存ともいうような状況に陥っていたのだ。そのため、2015年10月にエドは1年間の活動休止を取ることを発表している。
そんな時にエドはチェリーとニューヨークで奇跡的な再会をする。エドとチェリーが最初に出会ったのは、エドがまだ11歳だった時のこと。幼なじみのような関係で、その後同じ高校へも進学している。当時もお互い惹かれあっていたようだが、友人関係から発展することはなかった。そしてエドが高校を中退してからは、お互い連絡もとっていなかった2人が、この再会から距離を縮めていく。その過程でテイラーが愛のキューピット役となるエピソードがある。テイラーが自宅で開催したアメリカ独立記念日パーティに、エドはチェリーを誘って訪れた。のちにエドが言うには「これが初めてのデートらしいデート」だったようだ。この日をきっかけにお互いの関係を深めていくことになることを、テイラーは知っていたのだろうか。活動休止中のエドを支え続けたチェリー。その甲斐あってか。次第にエドの体調は回復し3rdアルバム『÷(ディバイド)』を2018年にリリース。この時期にチェリーに抱いた想いや、愛しく想う感情を歌いあげた収録曲の「Perfect」は、至極のラブソングとなっている。
Perfect (Official Music Video) -エド・シーラン-
そして2017年からは2年の歳月をかけて世界各国で260ステージにも及ぶワールドツアーを敢行。この間もエドとチェリーはより一層の愛を深め、ツアー中の2018年1月に遂に2人は結婚、新たなステージを共に歩み始めることになる。その結婚式は家族や友人約40人というひっそりとしたもので、大成功したアーティストと言われていることから見ると地味なものであったかもしれない。しかし派手になることを望まなかったエドにとって、最高のウェディングになったのだと思う。また彼がつけていた指輪は、チェリーが自ら銀粘土で作ったハンドメイドであることも明かしている。エドの人柄を物語るかのようなエピソードだ。セレブリティにはなったけれど、驕り高ぶることなく、普通を大切にするエドの生き方のスタンスに共感する人も多いのではないだろうか。
エド・シーランのブリットアワード2022でのパフォーマンス。Photo:Gareth Cattermole/Getty Images
世界的に大ヒットした『÷(ディバイド)』から4年。2021年10月にリリースされた『=(イコールズ)』は、その間にエドの人生に起きた様々な出来事に向き合ったアルバムとなった。それはチェリーとの結婚、2020年9月に誕生した長女・ライラへの想い、あるいは大切な人の死などについて様々な心境を綴った曲が凝縮されている。エド自身、このアルバムを「僕が大人になるまでの成長の記録」と位置付けているようだ。
アルバムに収録された「Tides」は父親になったエドが、戸惑いながらも新たな生き方に向かおうとする決意表明だ。目まぐるしいほどの日々を送るそれまでの人生と、眠っている子供を腕に抱いた時に生まれた新たな感情の対比に、前向きなメロディが胸に迫ってくる。また「Sandman」はライラへの愛情が溢れ出した歌だ。子供用の楽器を使った子守歌のような響きを持つ優しいメロディは、大人たちでさえ優しく穏やかな気持ちにさせてくれる。
Tides (Official Lyric Video) -エド・シーラン-
『=(イコールズ)』に収録された「First Times」は、タイトル通りエドに初めて起きた出来事をシンプルな言葉で綴った歌だ。そして、その初めての出来事とは、すべてチェリーとの間に起きた記憶だ。
“最初のキス、最初の夜、君を泣かせた最初の歌
僕が “愛してる “と言ったときの君の目を見たとき、僕は
あの夜、家にたどり着いたときのドキドキ感は今でも忘れない
あと100万回の初めての出来事が待ち遠しい”
この曲は、間違いなくチェリーに対する揺るぎのない愛のメッセージだ。
また「First Times」の最後は、こんな歌詞で締めくくられている。
“僕たちの最初の子供、そしてその後、100万回以上の初めての出来事”
チェリーに対する愛情を歌った「Perfect」から4年。エドのチェリーに対する眼差しと感情がより昇華した曲が「First Times」であるのだろう。2人の旅がこれからも続いていく中で、エドは今後も愛情溢れる素敵な歌を作ってくれることだろう。
そして最新のエドに関する嬉しいニュースが届いた。
2022年5月に次女が誕生し、インスタグラムで興奮とともにあふれる幸せを綴っている。
“僕たちは美しい女の子の赤ちゃんをもう1人迎えました。
彼女のことをとても愛しているし、4人家族になれて最高に幸せ”
新たな家族を迎え、エドの作る音楽はより多彩なものになっていくことだろう。
First Times (Acoustic) | Instagram Live -エド・シーラン-
赤ちゃん用の靴下の写真で投稿された次女の誕生を報告するインスタグラム。
今回紹介した6つのエピソードを皆さんはどう感じるだろうか。
変わらぬ音楽スタイルを貫くカッコ良さ、困難を乗り越えたタフさ、ホームレスから上りつめた成功者、世界中のアーティストから愛される人格、奇跡のラブストーリーの主人公、家族を愛する理想の男性。
その他にもエドに関する素敵なエピソードはたくさんあるので、是非皆さんの視点でもエドの魅力を探してみて欲しい。そして今後も、エドはまた新しい魅力を私たちに見せてくれるに違いない。
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